「コレクト・ナショナル(国民収集)」などフードバンクで集められた寄付食品は、支援団体を通して必要とする人に届いている。支援の仕方は様々だが、特に生活困窮者の孤独を防ぐという、行政による公的扶助だけでは得られない効果も期待されている。2023年11月下旬、パリの生活困窮者を支援する二つの団体を訪れた。
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定価の2割、支払い求める理由は心理面
パリ14区のマンションの一角に、「福祉スーパー」と呼ばれる小売店がある。約30平方メートルのスペースは食品であふれていた。ちょうど「コレクト・ナショナル」の直後だったためとくに品物が豊富だという。
棚には、缶詰やサラダ油、チョコ、パスタなどが並ぶ。野菜や果物のほか、冷蔵庫にはハムやヨーグルトなども置いてある。見たところ、普通の小さな商店と同じだが、違うのは価格。通常のスーパーの20%の価格で売られている。
火曜日の午後、6人の子がいるひとり親の女性(45)が、車輪付きの買い物袋を引いてやってきた。牛乳やシリアルなど次々とレジ台に乗せていく。バナナやジャガイモなど20商品ほどを選び、50ユーロ相当が約10ユーロ(約1660円)。女性は現金を渡しながら、「普通のスーパーだとこの値段でおむつしか買えない」と喜んでいた。
この福祉スーパーで扱う商品は主に、フランスの大手フードバンク「バンク・アリマンテール」からの商品や毎週もらうスーパーマーケットの売れ残り商品、団体が安く買い付けた食品だ。
目的は、恒常的な支援ではなく、一時的に経済的に困難な状況に陥っている人がその状況を乗り越えるために利用してもらうことだ。
女性の場合は、在宅が多かったコロナ禍に、夫の暴力が悪化し、3年ほど前に夫が出ていき、1人で子どもを育てている。6人の子どものうち成人した2人は家を出て、いまは3~8歳の子ども4人と暮らす。
ソーシャルワーカーにすすめられ、福祉スーパーを利用し始めて、状況はよくなったと実感はしているが、10ユーロを払えない週もあり、貯金はできない。「気持ちと体力があっても、お金という手段がないとなにもできない」と訴える。
かつては空港で働いていたが、5人目が生まれて仕事を辞めたという女性。「母という仕事だけ。その仕事に給料はない」と話す。それでも、「きっと状況はよくなる」と語った。
ここの福祉スーパーの場合…